健康支援トピックス

2013/12/17

確認しないと気が済まない

何度も確かめないと気が済まず、落ち着かない。同じ行為をくり返して日常生活に支障が出る場合は、強迫性障害(OCD)かもしれません

外出時に家のカギをかけたかどうか不安になり、戻って確認したという経験がある人は多いのではないでしょうか。ただ、そうした確認作業がだんだんエスカレートしていく場合は要注意。何度やっても気が済まない、延々とくり返して日常生活がままならなくなっているということはありませんか?

例えば、トイレに入ったあとで手が汚れたと思い込むと、石けんで洗っても心配になって何度も手を洗い続けてしまう。泥棒が入るのではないかという不安から、外出時に家中の窓や玄関の戸締りを何度も点検・確認してしまう。物の数を数えると、間違っているのではないかと気になって4回も5回も数え直してしまう。こうした行為が少しずつエスカレートしている場合、強迫性障害(OCD)かもしれません。

OCDでは、強迫観念に伴って高まる不安や不快感を、少しでもやわらげたり打ち消すために同じ行為をくり返します。くり返される強迫行為は、客観的に見るとまったく合理的ではないのですが、本人は不安な気持ちを打ち消すために執拗にくり返すことをやめられません。

もともと、几帳面で完璧主義の性格の人に多い傾向があります。次第に症状がエスカレートすることもあり、患者さんは、自分でもやりすぎと思う、物事が進まず疲れる、やめられないことがつらい、という自覚を持っています。また、うつ病やパニック障害を併発することも少なくありません。

この病気のはっきりした原因はわかっていませんが、脳内神経伝達物質の1つであるセロトニンが関与していると考えられています。また、強迫行為は人間関係や仕事のストレス、生活環境の変化で悪化するといわれます。

患者さんの中には、自分の力ではどうにもならない不安、例えば重要な仕事を任されたがうまく運ばない、子どもが問題行動を起こすが自分の手に負えないなどの不安状況がみられることがあります。

確認行為は、大きな不安に対処する代わりに、目の前の小さな不安、例えば鍵をかけたかどうか、手がきれいかどうかという不安状況を「現実に対処している感覚」にすり替えて気持ちの安定を図るという面があります。このような場合には、仕事がうまく進んだり、子どもの生活が安定すると、自然に確認行為がなくなっていきます。

治療はSSRIを中心とした薬物療法と、認知行動療法や森田療法があります。認知行動療法では、どんなときに症状が現れ、なぜ不安になるのか、それを打ち消すためにどんな行動をとるのかをじっくり見つめ直した上で、対処方法を考えます。

強迫行為の原因となる不安や恐怖感に焦点をあて、客観的・合理的な理由がないことを専門家と一緒に確認していきます。認知のゆがみを直すことで、強迫行為をくり返さないようにすることが目的です。

一方、森田療法は不安という気分は自分ではどんなことをしても変えられないという事実を自覚した上で、不安はあるがまま、感じたままにして、むしろ目の前の自分にとってやるべきことをやっていくように促します。患者さんには確認しないと不安だけれど、それよりも今、家を出ないと遅れてしまう......などという境地での生活がみられます。

適切な治療を根気よく続ければ、症状は徐々に改善されていきます。仕事や家事、社会関係など、生活への支障が深刻化する前に、早めに医療機関を受診しましょう。

また、患者さんが強迫行為を家族に手伝わせようとする場合もありますが、手伝うことでかえって強迫行為がエスカレートすることがあります。家族だけで何とかしようとせず、主治医とよく相談し、対処していくことが大切です。



監修:東急病院、東急健康管理センター所長 伊藤克人